立花課長は今日も不機嫌
顔を洗うように両手で撫でる。
それは、まだ完全に覚醒しない頭を目覚めさせようとしているようだった。
「それから、もう一つ、すみません」
「今度は何だ」
「私のせいで人事から外されると聞きました」
立花さんが眉間にしわを寄せる。
「誰から聞いた」
「あ、えっと……風の噂です」
立花さんが「風の噂?」と訝る。
でも、入江くんが出所だとは、口が裂けても言えない。
「本当にすみません」
カウンターに頭を押し付けると
「佐伯に謝ってもらったところで、何の解決にもならない」
「そう……ですよね」
もっともなことを返されて、立つ瀬がなくなる。