立花課長は今日も不機嫌

「罠だから」

「……はい?」

「いや、何でもない」


立花さんはすぐに誤魔化したけれど。


……聞き違いだろうか。
“罠”と言ったように聞こえた気がする。


「送ってく」

「え? でもお酒……」

「俺の運転じゃない。タクシーだ」

「それなら、一人で大丈夫です」


ひどい仕打ちばかりしておいて、この上タクシーで送ってもらうなんてことできない。


「こんな時間に女性を一人で帰すわけにはいかない。佐伯も一応は女だ」

「――っ」


“一応は”……。

言い返すような立場じゃないことは十分承知しているから、グッと堪える。

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