立花課長は今日も不機嫌
「行くぞ」
カウンターに置いた合鍵を立花さんがサッと取った。
「大通りまで出れば、タクシーも捕まるだろ」
機敏な動作で店の入口へと歩き出す。
さっきまで眠っていたとは、とても思えない。
そんな立花さんをボケッと見ていた私に、立花さんから鋭い言葉が飛んでくる。
「早く出ろ」
「――は、はいっ」
立花さんに急かされて、ワンテンポ遅れて外へと出たのだった。
すぐに捕まったタクシーの中では、終始無言。
私と同じ空気を吸うのですら嫌なのかもしれない。
そう思うと、更に気持ちは下降の一途をたどっていく。
重い空気に包まれたまま、下りる間際に「おやすみなさい」と言った私の言葉にも「ああ」と短い返事だけだった。