立花課長は今日も不機嫌

入江くんは目を見開いた後、ニヤリと笑った。


「それじゃ、片思い同士ってことで、先に杏奈さんに報告しようかな。本当は沙月さんも揃ってからと思ったんですけどね」

「報告って?」


聞き返した私に、「やだな、杏奈さん、忘れたんですか?」と目を細める。


――あっ。
その瞬間、思い出す。

立花さん情報だ。


「何か分かったの?」


思わずすがりつくと、入江くんは自分の口にシーっと人差し指を当てた。

私たちの他には誰もいないけれど、念には念を押して、入江くんが人の気配を窺う。

そして誰もいないことを確認すると、自販機コーナーの更に奥へと私の腕を引っ張ったのだった。

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