立花課長は今日も不機嫌
「杏奈さん?」
入江くんそっちのけで記憶の狭間を行き来している私を、入江くんが呼び寄せる。
「あ、ごめん。それで、不正は事実なの?」
「そこまでは俺にもちょっと……。ただ、」
「ただ?」
「立花さんを人事から外すっていうのは、鳥塚専務の差し金なんじゃないかって」
「え?」
「嗅ぎまわってる立花さんを疎ましく思って、どこか遠くに飛ばす気なんじゃないですか?」
「どこかって……代理店とか?」
「多分そうでしょうね。本社から出す気ですよ」
そんな……。
身体から力が抜けていく。
立花さんが私には手の届かない遠くへ……?