立花課長は今日も不機嫌

ポツリと呟くと


「女性に魅力を感じないってね」


霧子さんは、そのまま良樹さんを上目づかいに軽く睨んだ。

でもそこには、悪意があるわけじゃなく、どちらかと言えば、優しく見つめる延長上にある目つきだった。


「……まだ怒ってる?」


良樹さんが両手を胸の前で組んで、恐る恐る霧子さんに尋ねる。


「怒りなんて、そんなに持続するものじゃないわ」


その言葉に、ほっと胸を撫で下ろす良樹さん。


「ほんとに悪いことをしたと思ってるわ」

「……もういいのよ、昔のことだしね」


別れの場面が修羅場だったのかと、余計な妄想をしてしまった。

そんな二人のやり取りを聞いていて、ふと思い出したことがあった。

< 272 / 412 >

この作品をシェア

pagetop