立花課長は今日も不機嫌
私の質問は忘れられたようだ。
楽しげにお店の話をし始めた霧子さんを横からじっと見つめた。
すると、私の視線に気づいた霧子さんは
「……あ、私がホステスになったきっかけのことよね」
思い出してくれたようだった。
良樹さんとの会話を邪魔してしまったようで、ちょっと申し訳ない気持ちになる。
頷いた私に、「杏奈の推測通りよ」と霧子さんは微笑んだ。
やっぱりそうだったのだ。
「私が良樹と知り合ったのは、高校3年生のときでね。4つ年上の大学生だった良樹は、それはもう大人の男で」
「当時は私も、カミングアウトしてなかったから」
良樹さんが注釈を加えてくれた。
「若い頃って恋愛しか頭にないでしょう? 好き好きモード全開で良樹に迫って、やっと彼女の座をゲットしたの」