立花課長は今日も不機嫌
「この顔のどこを見て、そんな自信が沸いてくるわけ?」
良樹さんの頬を霧子さんがキュッと抓る。
「痛いじゃないのよ。顔だけはよしてちょうだい」
霧子さんの手を払い、女優のごとく頬を覆った。
そんなやり取りに思わず吹き出すと、二人はストップモーションでもかけたかのように言い合いを止めたのだった。
「……まぁ、とにかく、そういうことよ。中身だけはすっかりオネエになってて驚いたわ。こんな近くに店を出してるなんて思いもしなかったしね」
「私も驚いたわ。まさかプリマベーラに霧子がいたなんてね。目と鼻の先ですもんね」
感慨深そうに二人が頷き合う。
最初の重苦しい空気は、いつの間にか退散してしまったのだった。
数年ぶりの再会で、わだかまりも溶けたようだ。
――そうだ。
あることを思い出した。