立花課長は今日も不機嫌

「この顔のどこを見て、そんな自信が沸いてくるわけ?」


良樹さんの頬を霧子さんがキュッと抓る。


「痛いじゃないのよ。顔だけはよしてちょうだい」


霧子さんの手を払い、女優のごとく頬を覆った。

そんなやり取りに思わず吹き出すと、二人はストップモーションでもかけたかのように言い合いを止めたのだった。


「……まぁ、とにかく、そういうことよ。中身だけはすっかりオネエになってて驚いたわ。こんな近くに店を出してるなんて思いもしなかったしね」

「私も驚いたわ。まさかプリマベーラに霧子がいたなんてね。目と鼻の先ですもんね」


感慨深そうに二人が頷き合う。

最初の重苦しい空気は、いつの間にか退散してしまったのだった。
数年ぶりの再会で、わだかまりも溶けたようだ。


――そうだ。
あることを思い出した。

< 277 / 412 >

この作品をシェア

pagetop