立花課長は今日も不機嫌
「霧子さん、プリマベーラに来てた、私と同じ会社の人なんですが、」
「ちょっと感じの悪い男のこと?」
そうですとは、すぐに頷けない形容詞だ。
苦笑いを浮かべると、霧子さんは小首を傾げた。
「その人、良樹さんの弟さんなんです」
「――えっ!?」
驚いてから、ついさっき口から出た感じの悪いという形容に対して「ごめん、悪気はないのよ」と、霧子さんが謝る。
「別にいいわよ。霧子の毒舌は昔からですからね」
良樹さんの最後の一言に、霧子さんの眉がピクリと動く。
「……でも、言われてみれば、どことなく似てたかもしれないわね」
立花さんの顔を思い浮かべているのか、霧子さんが視線を宙に彷徨わせた。
「どこで繋がってるかなんて、分からないものよねぇ」
霧子さんの3杯目のお代わりを作りながら、良樹さんはしみじみ呟いたのだった。