立花課長は今日も不機嫌
――そうだ。
報告すべきことがあったんだ。
大事なことを思い出した。
「立花さん、」
身体ごと振り返ると、立花さんは目だけ私の方へと向けた。
その目の動きにすら、私への嫌悪感が滲み出ている。
「お店、辞めたんです」
私の一言に立花さんの瞳が揺らいだものの
「そうか」
気にしている事案というわけでもなさそうな短い返答が、無理に呼び起こした私の発言意欲を削ぐ。
けれど、ここでそのまま黙ってしまうわけにはいかない。
「ご迷惑をお掛けして、本当にすみませんでした」
何度謝っても足りない。
土下座でもこと足りないほどだ。
頭を下げると同時に、エレベーターの扉が開く。
私の降りる階に着いたのだった。