立花課長は今日も不機嫌

沙月には、全くといっていいほど入江くんの気持ちは通じていないらしい。
それを証明することになってしまった。

恋愛というやつは、本当に厄介だ。


「超豪華弁当を作ってきたのは、入江くんに諜報員としての報告をしてもらうため」

「え?」


再び、入江くんと声が重なる。


「このところ全然音沙汰なしだったじゃない」


確かに沙月の言う通りだった。
自販機コーナーで続編を聞いてから、3週間は経ってるはず。


「杏奈は杏奈で、溜息ばかりだし」

「え?」

「会えば“はぁ”って。ワケを聞いても“何でもない”って。まぁ、どうせ立花さんのことなんでしょうけど」

「……それじゃ、私のため?」


思いもしない沙月のセリフに、今度は私の目が点になる。


自分の力じゃ立花さんを救えないことに焦りと不安ばかり。
何をしていても、考えることは一つだけだった。

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