立花課長は今日も不機嫌
「何か見返りとか求められたりしてるんじゃない?」
「えっ……や、やだな、そんなことないよ」
しどろもどろになる私の目の奥を、沙月が更に覗き込んだ。
求められたというより、私からの提案だ。
それに、そんなに大したことでもない。
……と思う。
そっと視線を戻すと
「嘘つき」
沙月が眉間にしわを寄せた。
「う、嘘なんかじゃないよ」
「杏奈は嘘つくときに鼻の穴が膨らむの」
「――なっ、なによ、それ!」
いくら沙月でも失礼だ。
膨らませてなるものかと、必死に呼吸を堪える。