立花課長は今日も不機嫌
「え?」
「そのエンジニアとかいう人に、何か求められてるんじゃない」
「だからそれは……」
ごにょごにょと口ごもる私に、さっきよりも目を大きく見開いた沙月がジッと見つめる。
「杏奈の心配するのは今に始まったことじゃないし」
「うっ……」
そこを突かれると、本当に何も言えなくなる。
アルバイトのことだってそうだ。
始めるときはもちろん、立花さんにバレたときも。
沙月は態度にこそ出さないけれど、裏では心配してくれているのが分かるから、途端に申し訳なくなる。
だからこそ、早起きして豪華なお弁当を作って入江くんから話を聞き出そうとしてくれたのだ。
やっぱり沙月には、きちんと話しておこう。
「ごめん、沙月。あのね……」