立花課長は今日も不機嫌
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忘れ物をしたという口実で、守衛さんに中へ入れてもらうことに見事成功した私たち。
さすがに休日はエレベーターが停止。
最上階というだけあって、非常階段をのぼりきったときには岩瀬さんも私も息が絶え絶えだった。
非常灯だけが点く通路を専務室目指して歩く。
二人の荒い呼吸音だけが響いていた。
「ここです」
ようやくたどり着いた専務室の前。
何かと情報通な入江くんに頼んで入手していた暗証番号を入力すると、カチャリという音と共に鍵が開けられた。
「……あ、あの……そのパソコンというのは、も、も、ものすごく偉い方のものなんでしょうか……?」
岩瀬さんの瞳が不安に揺らぐ。
落ち着きなさそうに、あちこちへと視線が彷徨った。