立花課長は今日も不機嫌
「ともかく、助かったよ」
去り際、肩ごしに「サンキュ」と小さく呟くと、立花さんは来た道を引き返して行った。
“サンキュ”って……。
トクンと揺れる鼓動。
珍しく声色の優しい言葉が、耳に残る。
僅かに浮かべた口元の笑みは、目に焼きつく。
最低の女と言われた私には、立花さんに恋愛の対象として見てもらえることは100%ないというのに。
私の中にまだまだ絶大な存在を誇っている立花さんの声と笑顔は、どうしても私の心をかき乱すのだった。