立花課長は今日も不機嫌
第5章

①狙いは逆恨みの末に



「良かったね、杏奈」


沙月がこれ以上ないという満面の笑顔を浮かべる。


久しぶりに来てみた社員食堂。
周りのみんなが口々に噂しているのは、鳥塚専務の進退についてのことだった。


復元されたメールのデータは、あの後取締役会に提出され、全てが明るみになり、鳥塚専務は当然のことながら取締役から外され、地方代理店の営業へ異動。

会長の恩情なのか、解雇も刑事告訴も免れたらしい。


立花さんのサイパン行きはなくなったのだけれど……。
当然のごとく、あの異動は白紙になると思っていたのに、人事に戻されなかったのだ。


そのことで、思わず溜息が漏れる。


「あれ? どうして溜息なの? 遠くに行くことがなくなったんだもの、バンバンザイじゃない」

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