立花課長は今日も不機嫌

「杏奈ちゃん、大丈夫?」


優しく問い掛けてくれた良樹さんに何とか頷くと、不意に視線とは逆の方向へ肩を引き寄せられた。


――えっ。


立花さんの胸に抱き寄せられたと悟った途端、うるさいほどに早鐘を打ち始める鼓動。


「……立花さん?」

「心配するな。大丈夫だ」


怪我しているはずなのに、その腕できつく私を抱き締める。

胸の高鳴りは激しくなるばかりなのに、不安がどんどん影を潜めていく。
立花さんの温もりが、何よりも今は私を安心させた。


「ちょっと海人ったら。私の存在を忘れてなぁい?」


良樹さんにたしなめられてもなお、立花さんの腕の力が弱まることはなくて、それに甘えてしまう私。

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