立花課長は今日も不機嫌
「でしょう? だから、鳥塚専務が私の顔を覚えていたとしても、バニーちゃんの私=佐伯杏奈だとは分からないと思う」
「確かにそうね」
物的証拠で沙月も納得してくれたようだった。
その顔を見て、私にようやく安堵が訪れる。
「でも、立花さんは、よく杏奈だと分かったわね。私だって絶対に気付かない自信があるわ」
携帯の写真と実物を何度も見比べて、沙月が首を捻る。
多分、立花さんも最初は気付いてなかっただろう。
何かの拍子で僅かな尻尾を掴んで、それを決定的にしたのが内腿の痣だったのだ。
ミーティングルームで私のスカートをまくり上げるまでは、確証を掴めていなかったに違いない。
鋭い目つきで尋問されたときのことを思い出して、再び背筋が震えるのだった。