立花課長は今日も不機嫌
③予測不可能なのが、恋に落ちる瞬間
「ねぇ、杏奈! 今朝のニュース見た!?」
出勤早々、興奮状態の沙月がロッカールームから出たばかりの私の腕をむんずと掴む。
そのままロッカールームへと連れ戻された。
「鳥塚専務が逮捕って! しかも傷害!」
「うん……」
「……あら? なに、その反応」
「あ、ううん。驚いたよね」
冷静に答えると
「……もしかして知ってたの?」
沙月の猜疑心に火が点いた。
立花さんの推察通り、あの車を運転していたのは鳥塚専務だったのだ。
あの事件の翌日、立花さんがしらみつぶしにレンタカーの店を巡って、その事実を突き止めたということだった。
「……被害者は立花さんなの」