立花課長は今日も不機嫌

もう、頷くだけで精一杯だった。

立花さんは艶っぽく微笑んだ後、額に唇を落とした。


これから始まる甘い時間に胸が高鳴ると同時に、立花さんとのここ数ヶ月間が思い出されていく。


立花さんが初めてプリマベーラに来た夜。
鋭い視線で私を見据える目に震えが走った。

交わす言葉ひとつとっても、どれも恐ろしいばかりの存在で、恋愛の対象として見る日が来るなんてことは想像もできなかった。


でも、いつどこで恋に落ちるかは、誰にも予測不可能。
ある日突然、思わぬところで、思わぬ人が、特別な存在に変わってしまう。

そして、その瞬間、心は制御不能。
否定するばするほど、恋のベクトルが向いてしまう。


あの美しい文字のメモ書きに、相手も分からずにときめいて。
険しい表情の中、時折浮かべる微笑みに惹きつけられた。

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