立花課長は今日も不機嫌
④最低の嘘を吐いた夜
「随分と浮かない顔ね。どうかしたの?」
お店が終わってバニーちゃんから着替えていると、既に帰り支度を終えた霧子さんが鏡越しに心配そうな笑顔を向けた。
「そういえば、この前のちょっと嫌なお客、また来てたわよね。もしかして、それ絡み?」
さすがは霧子さん、鋭い。
「……実は、あのお客さん、私が勤める会社の人なんです。しかも、人事部……」
「えーっ?」
いつも冷静な霧子さんにしては珍しく、控室内に響き渡るほどの声を上げた。
そんなことを気に留めることもなく、「どういうことなの?」と、椅子を私の方へと引っ張り詰め寄る。
立花さんとの経緯を大雑把に話すと
「なるほどね。それであの視線」
霧子さんも立花さんの鋭い視線は感付いていたらしい。
店内での態度に、それで納得がいったようだった。