立花課長は今日も不機嫌
立花さんはあの後もずっと体勢を崩さず、何を言ってくるわけでもなく、ただ無言の圧力を私に送り続けて閉店までいたのだった。
今思い出しただけでも怖い。
「もしかしたら、店長が言ってた人って……」
何かを考えるようにしていた霧子さんが、独り言のように呟く。
「店長がどうかしたんですか?」
霧子さんはハッとしたように私を見ると、「実はね、」と話し始めた。
「お店に、杏奈のことを問い合わせる電話が何度か掛かってきてたらしいの」
「……私のことを?」
「そうなの。私も詳しくは聞いていないんだけどね。杏奈のファンが掛けてきてるのかなーくらいにしか思っていなくて。それが、その立花さんだったのかもしれないわね」
辞めたかどうか確認するために電話を?
それで、いつまでも辞めないから、業を煮やして今夜ここへ押しかけた、とか?
徹底的に追跡するぞという立花さんの強い意志を感じて、ブルっと震える。