立花課長は今日も不機嫌
そこまでされて、呑気に続けていけるわけにもいかない。
つい先延ばしにしてきてしまったけれど、いよいよ本当に覚悟を決めないとならないか……。
「それじゃ、辞めちゃうのね……」
霧子さんが急に寂しそうに私を見つめるから、妙にしんみりとしてしまう。
自分のことなのに、どこか人ごとだったことが、急に現実味を帯びてきた。
「そうしないといけないみたいです。でも、なかなか言い出せなくて……」
「そう、残念ね……」
トボトボと控室を出て行く霧子さんに「お疲れ様でした」と声を掛けると、左手をヒラリとだけ上げてドアを閉めたのだった。
そして、重苦しい気分を引きづりつつ、私も帰ろうとお店の裏口のドアを開けたときのことだった。
「……岩瀬、さん?」
電柱の陰から出てきた人影にびっくりしながらも、それが岩瀬さんだと分かって、ちょっとホッとする。
「どうかしましたか?」
「あ、あの――っ!」
岩瀬さんが勢い余って、何もない地面に蹴躓く。