立花課長は今日も不機嫌
第2章
①“交通事故”の代償
「ねぇ、沙月、万年筆ってどこで買えるか知ってる?」
沙月にそんな質問をぶつけたのは、翌日のことだった。
退勤時間を迎えたロッカールームで、バッグに化粧ポーチを詰め込む手を止めて、沙月が不思議そうに顔を上げた。
「万年筆?」
「うん」
夕べ、立花さんの万年筆が“交通事故”に遭ったのは、少なからず私のせいだ。
とすれば、やっぱり弁償すべきだろうという結論に至った私。
お昼休みに会社近くの文房具店へ行ってみたものの、見つけられなかったのだった。
「デパート……かなぁ。紳士服売場の近くで見たことがあるような」
そっか。
紳士服売場なんだ。
今まで気にも留めたことがなかったっけ。
「でも、万年筆なんて、急にどうしたの?」