立花課長は今日も不機嫌
顎に人差し指を当てて思案してみても、その名前が思い出されることはなく……。
というよりも、今はそれどころではない。
「はい、失礼します……」
おずおずとソファに腰を下ろす。
チラッと横目で立花さんを盗み見ると、ソファに深く腰を下ろして悠然と足を組んでいる。
別段変わった様子は見られなかった。
……やっぱり気付いてないよね。
こっそり小さく息を吐き、テーブルにセッティングされていたウイスキーと氷で水割りを作った。
それでも緊張が解れたわけではなく、手が震えるせいで、「どうぞ」と置いたグラスの表面が波立った。
「どうかしたのか」
立花さんから声を掛けられたものだから、ビクンと肩が震える。