立花課長は今日も不機嫌
17時50分。
指定された時間まで、あと10分。
降り始めた雨の中、外で待つのを避けて書店の中へ入って来たのはいいけれど、本を選ぶどころか、時間ばかり気になって腕時計をチラチラ確認しっぱなしだ。
1分でも遅れたら、絶対に何か文句を言われるに違いない。
そう思うと、中にいるより、お店の軒先で雨をよけながら待つ方がいいという結論に至った。
天気予報でも、18時以降の雨の確率は高かったのに、朝に顔を覗かせていた晴れ間にそんなことはすっかり忘れて、傘を持たずに家を出た私。
歩道いっぱいに開く傘の花を眺めていると、ふと目の前に一台の車が停車した。
何気なく見ていると、助手席のパワーウインドーが下げられ、「佐伯」と私を呼ぶ声が聞こえたのだった。
――?
腕時計を見ると、きっかり18時。
もしかして、立花さん?