立花課長は今日も不機嫌
「あ、いえ……すみません」
「新人?」
「いえ、そういうわけでは……」
「そうか」
贔屓にしてくれるお客はいない。
3ヶ月も働けば、指名くらい入っても良さそうなもの。
そういったことを考え合わせると、新人と同等だ。
幸いなことに立花さんは、私が不慣れなキャバ嬢だと思ってくれているらしい。
ということは、私が会社の人間だとはやっぱり気付いていないのだ。
よかった……
と思ってもいいのかな……?
「杏奈と言ったかね?」
50代の方の男性が問いかける。
私が作った水割りを一気にグラスの半分くらいまで飲み干して、眼鏡の奥の目を細めた。
「はい」
「ここへは何度か来たことはあるが、私のところへつくのは初めてだったな」