立花課長は今日も不機嫌
個室にこもって声を潜め、店長に電話で告げると、店長は快くお休みをくれた。
ただ、口から出かけた“辞めます”という一言は、言葉にはならなかったのだった。
そういうことは直接会って言わないとダメだと自分に都合良く考え、一人頷きながら携帯をバッグへしまい、カウンターへ戻る。
すると、ちょうどタイミングよく良樹さんがカクテルを出してくれた。
「キールよ」
「……キール」
聞いたことのないカクテルだ。
赤ワインをうんと薄くしたような色味が綺麗だった。
立花さんは何を飲むんだろう。
そう思いながら隣を見る。
……ん?
これは何だろう……?
私の顔がよっぽど不思議そうに見えたらしい。