女神の微笑み
隣に腰掛けていた男がそんな女の肩に手を回し、耳元でささやいた。

「ほしいだろ?さくら。無理しなくていいんだ」

そう、女はさくらだ。

さくらの手が小さく震え、同時に吐き気が体を襲う。
「ほしいよ、風間(かざま)さん、ねえお願い」

何かを思い出したように、急にねこなで声を発したさくらが、男に甘えるように寄りかかった。

この時、さくらはもう、自身の中で、全てを失っていた。

あるのは、時と共に募った(つの)、たった一つの憎しみだけ…

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