女神の微笑み
「着きましたよ」

一時間ほどが過ぎていただろうか。

知らず知らずのうちに下を向き、うつ向いたままだったアヤは、運転手の声で、今やっと、着いたことを知った。

すぐに支払いを済ませ、アヤは母の待つ病室に向かって走った。

いや、実際は走りだそうとした。

時と共に痛みを増したその体が、走ることを許さない。

でもアヤは懸命に痛みを堪え、母の病室へと急いだ。

病室の見えるあたりに着いた時、そこに慌ただしい雰囲気は感じられなかった。

一命をとりとめたのか。

そんな期待を抱いて、アヤは病室へと入っていった。

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