女神の微笑み
起きてみれば眠りはいつもより少し、浅かった気がするが、静寂の中にいたからだろう、三人が目を覚ましたのは次の日の早朝だった。母が帰った形跡はない。
「まだちょっとだるいけど、だいぶ楽になったね」
ユミが誰にともなく問いかけ、さくらがそうだねと答えた。
それを聞くともなく聞いていたアヤは体をおこし、何気なくテレビのスイッチを入れた。
その時だ!
《次のニュースです。警視庁は昨夜、覚醒剤所持、使用、及び密売をおこなっていたとして二人の男を逮捕しました。逮捕されたのは片桐(かたぎり)拓也容疑者21歳、浦城(うらき)正裕容疑者同じく21歳の二人で、二人はおおむね容疑を認めており、引き続き警視庁は一昨日の夜から昨日まで、一緒にいたとみられる女子校生数名の行方をおっているということです》
「マジ?…」
アヤがつぶやく。
「え?何これ…」
会話をしていたはずのユミとさくらの視線も、いつの間にかテレビに釘づけになっていた。
「ねぇアヤ?うちらパクられるのかなぁ…?」
普段から悪ぶって見せているユミは、逮捕のこともパクると言うらしい。
アヤだけは何故か妙に、冷静だった。
自分でも不思議なくらいに。
< 19 / 252 >

この作品をシェア

pagetop