女神の微笑み
そしてそのことを春美から伝えられた雅の心は、複雑だった。

もしこれで、アヤが二度と<楓>に戻ることがなくなったとしたら、自分にとってはうれしいはずである。

でもまた、アヤとは、あのロッカールームで自分が一方的に告げた逆恨みの言葉以来、会話も交していないことが、雅の中の複雑な思いの原因だった。

このままアヤと会わなければ、アヤの中での自分は最低以外の何者にもならない。

それがプライドからくるものなのか、あるいは同情からくるものなのかは、雅自身にもわからなかったが。


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