女神の微笑み

その時、アヤは生まれて初めて、孤独を感じた。
こんな時あなたなら、正直になろうと思うことができるでしょうか？
それとももっと強くなろうと、強がることを選びますか？
アヤは後者を、強くなろうと思うことで、強がることを選んだ。
「猪狩、行くよ」
ガチャッという、またされていた部屋の鉄格子を開ける音の後に、教官が言った。
涙を拭いて、小さくうなづき、無言で部屋を出たアヤが、少し笑っていたのを、教官は見た気がした。
決して楽しそうとか、うれしそうではないが、確かに、アヤは一瞬、微笑みを浮かべていた。







その時のさくらはアヤやユミより一足早く、<院>にいた。
最初の一週間ほどはどうやら単独部屋での生活らしい。
そして明日、集団部屋への移動が決まっている。
さくらは大きな不安と、ほんのわずかな期待をだいて、単独部屋最後の夜を迎えていた。
明日から集団生活か…さくらは思う。みんなどんな人達なんだろう、殺人とか強盗とか、もっと怖いことした人もいるのかなぁ…でも今より少しは楽しくなるかな…そんな不安とわずかな期待と同時に、別のことも頭によぎる。