女神の微笑み
「ちょっと邪魔なんですけど」
同部屋の黒瀬美香(くろせみか)がさくらにぶつかってきた。
この女は今さくらのいる院内で、かなりの権力を持っている。
目をつけられないようにと、まわりのみんなが必死に気を使っている感じが、集団部屋に移された時のさくらにも伝わってきた。
だから決して目立たないようにと、最初はそれだけを考えていた。
でもどんなに目立たないようにしたって、こんな場所ならなおさら、さくらの美しさが目立った。
美香はそれに目をつけたのかもしれない。

最初は今のようなぶつかるとか、足をかけるというささいな嫌がらせから始まり、さくらが抵抗しないのがわかると、院生のほとんどが、そんな嫌がらせをするようになっていった。
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