嘘と正義と、純愛と。
次の瞬間、なぜか視界が反転する。不意打ちの出来事に声も出なかった。
ベッドに横たえられた私は、唇を震わせて声を絞り出す。
「騙したの?」
頭上に固く拘束される両腕。あんなに気怠そうだった広海くんは、軽々と私に跨ってこっちを見下ろしている。
不気味な笑顔を仰ぎ見て、怒りよりももっと、悲しい気持ちが私を支配していく。
「どうして」
「茉莉が悪いんだ! あんな一方的にっ……。しかも昨日も、ずっとあの男と一緒だった」
「やっぱり……! なんでそんなことまで!」
「俺は茉莉のためにやってるんだ!」
感情的に言い返されて、思わず閉口してしまう。
今までの単純な〝怒り〟とは種類が違う気がして、広海くんを注視する。
押さえる手はますます力を増して、私の手首は悲鳴をあげそうだ。
顔を少し歪ませると、血走った目をしていた広海くんが急に「ふっ」と笑った。
さっきの笑みとは違うやけに優しい目元が、余計に私を恐怖に陥れる。
「可哀想な茉莉。あの男に本気になったって傷つくだけだぞ? 昨日、お前も見ただろ? 車に乗ってた女。あれ、前に俺の家に来て割り込んできた女だろ」
広海くんに言われてドキリとした。
昨日の、女の人は……やっぱり田中さんなんだ。
本当はそうだろうとわかってはいても、ごまかすように『違う人かも』って思いこもうとしてた。
私が引っかかってるのは、彼女と隠れるように会っていたからじゃない。
斎藤さんが口にした名前が、全く別物だったこと。
あれはいったいどういうこと? どうして偽名なんて使ったの?
広海くんの前での対策だったら、あの日、アパートを出て鉢合わせた時にいくらでも説明する時間があったじゃない。
ただの同僚ならなおのこと、普通に紹介してくれたらいいのに。
それをされず、嘘を吐き通された私って、斎藤さんにとってどういう存在なの?
そんな嘘を吐いてまで私に近づきたい理由ってなんなの?
全然、わからない。
ベッドに横たえられた私は、唇を震わせて声を絞り出す。
「騙したの?」
頭上に固く拘束される両腕。あんなに気怠そうだった広海くんは、軽々と私に跨ってこっちを見下ろしている。
不気味な笑顔を仰ぎ見て、怒りよりももっと、悲しい気持ちが私を支配していく。
「どうして」
「茉莉が悪いんだ! あんな一方的にっ……。しかも昨日も、ずっとあの男と一緒だった」
「やっぱり……! なんでそんなことまで!」
「俺は茉莉のためにやってるんだ!」
感情的に言い返されて、思わず閉口してしまう。
今までの単純な〝怒り〟とは種類が違う気がして、広海くんを注視する。
押さえる手はますます力を増して、私の手首は悲鳴をあげそうだ。
顔を少し歪ませると、血走った目をしていた広海くんが急に「ふっ」と笑った。
さっきの笑みとは違うやけに優しい目元が、余計に私を恐怖に陥れる。
「可哀想な茉莉。あの男に本気になったって傷つくだけだぞ? 昨日、お前も見ただろ? 車に乗ってた女。あれ、前に俺の家に来て割り込んできた女だろ」
広海くんに言われてドキリとした。
昨日の、女の人は……やっぱり田中さんなんだ。
本当はそうだろうとわかってはいても、ごまかすように『違う人かも』って思いこもうとしてた。
私が引っかかってるのは、彼女と隠れるように会っていたからじゃない。
斎藤さんが口にした名前が、全く別物だったこと。
あれはいったいどういうこと? どうして偽名なんて使ったの?
広海くんの前での対策だったら、あの日、アパートを出て鉢合わせた時にいくらでも説明する時間があったじゃない。
ただの同僚ならなおのこと、普通に紹介してくれたらいいのに。
それをされず、嘘を吐き通された私って、斎藤さんにとってどういう存在なの?
そんな嘘を吐いてまで私に近づきたい理由ってなんなの?
全然、わからない。