嘘と正義と、純愛と。
頭の中が混乱して、広海くんの手から逃れることなんて二の次になっていた。油断していた隙に、用意していたであろう紐で手首を括られると、カーディガンに手を掛けられる。
「え、ちょっ……やめっ、んん!」
途中で口を覆われて、言葉がくぐもってしまう。
足をバタつかせようとするけど、広海くんの荷重でそんな程度じゃ敵わない。
カーディガンを腕まで脱がされ、肌が露わになる。
すると、広海くんはスッと人差し指で二の腕に残る痣をなぞった。
「こんなボロボロの身体、アイツに見せられるのかよ?」
「あ……」
「っつーか、あいつがこれ以上茉莉に近づくようなら、あの男にもこんなふうに同じ目に遭わせてやる」
グッと指で押されて、まだ若干鈍い痛みがした私は、涙目になってしまう。
痛いから泣いてるんじゃない。怖いからでもない。
今、私が置かれてる状況全部が理由であるけど、そうじゃない気もする。
もう、何から考えればいいのかわかんない。
目を閉じると、一番に浮かんできたのは、彼……斎藤さん。
ああ、やっぱり私、あの人に救われたし、彼は嘘だとしても私のこの気持ちは嘘なんかじゃない。
それだけがはっきりとすると、目を開いて鋭く広海くんを正面から見据えた。
私はもう今さらだし、もとはといえば私たちの問題だし。
だったら、私が選ぶ道は、あの人を傷つけないようにするだけ。
目を逸らさずに、なんでも受け入れる覚悟で広海くんを睨みつけると、意外なことに、向こうの方が動揺している様子だった。
「殴ってもいい。乱暴に抱いてもいい。その代わり、あの人には金輪際近づかないで」
「茉莉……俺はただ……」
「絶対服従する私がいなきゃ不安なんでしょ? 社会では誰も自分の言葉を聞いてくれないんじゃないかって思ってるから」
「違う。俺は、茉莉じゃなきゃ」
「本当は私じゃなくてもいいし、それは広海くんが変わらないと永遠に終わらない思いだよ」
そんなふうに気づかせて、背中を押してくれたのは紛れもなく斎藤さんだから。
せっかく自分を変えるチャンスを無駄にしたくない。負けたくない。
「え、ちょっ……やめっ、んん!」
途中で口を覆われて、言葉がくぐもってしまう。
足をバタつかせようとするけど、広海くんの荷重でそんな程度じゃ敵わない。
カーディガンを腕まで脱がされ、肌が露わになる。
すると、広海くんはスッと人差し指で二の腕に残る痣をなぞった。
「こんなボロボロの身体、アイツに見せられるのかよ?」
「あ……」
「っつーか、あいつがこれ以上茉莉に近づくようなら、あの男にもこんなふうに同じ目に遭わせてやる」
グッと指で押されて、まだ若干鈍い痛みがした私は、涙目になってしまう。
痛いから泣いてるんじゃない。怖いからでもない。
今、私が置かれてる状況全部が理由であるけど、そうじゃない気もする。
もう、何から考えればいいのかわかんない。
目を閉じると、一番に浮かんできたのは、彼……斎藤さん。
ああ、やっぱり私、あの人に救われたし、彼は嘘だとしても私のこの気持ちは嘘なんかじゃない。
それだけがはっきりとすると、目を開いて鋭く広海くんを正面から見据えた。
私はもう今さらだし、もとはといえば私たちの問題だし。
だったら、私が選ぶ道は、あの人を傷つけないようにするだけ。
目を逸らさずに、なんでも受け入れる覚悟で広海くんを睨みつけると、意外なことに、向こうの方が動揺している様子だった。
「殴ってもいい。乱暴に抱いてもいい。その代わり、あの人には金輪際近づかないで」
「茉莉……俺はただ……」
「絶対服従する私がいなきゃ不安なんでしょ? 社会では誰も自分の言葉を聞いてくれないんじゃないかって思ってるから」
「違う。俺は、茉莉じゃなきゃ」
「本当は私じゃなくてもいいし、それは広海くんが変わらないと永遠に終わらない思いだよ」
そんなふうに気づかせて、背中を押してくれたのは紛れもなく斎藤さんだから。
せっかく自分を変えるチャンスを無駄にしたくない。負けたくない。