嘘と正義と、純愛と。
「野原さんって、女特有の〝狡さ〟を感じないから、私結構好きです。あ、勘違いしないでくださいね。そういう〝好き〟じゃないですよ」

臆面もなく、ストレートに自分の思いを口にする東雲さんに目を丸くする。
私なら、いくら同性で友達としてだったとしても、簡単に『好き』なんて言えない気がする。

この子は、良くも悪くも正直というか、自分に素直なんだ。
やっぱりそれは、私にないもので、だから羨ましさもあって、東雲さんのこと避けたかったのかもしれないな。

だけど、今はもうそんなふうに感じない。
むしろ、いい刺激を受けて、少し自分の糧になったらいいな、なんて思う。

東雲さんの横顔を見て、この間までの印象や彼女に対しての思いが変わっていることに気づく。
自分は苦手意識持っていたのに、『好き』と言われてうれしくなるなんて、本当私って単純かもしれない。

そんなことを考えていると、「これ」と東雲さんがパソコンをずらして見せてきた。

「わぁ。美味しそう。都内のケーキ屋さん?」

画面には、彩りの綺麗なケーキが並んだショーケース。そのほかにホールケーキや焼き菓子などを紹介するようなページに目を奪われる。

「パティスリー・ドゥ・ランコントゥル? 聞いたことないなぁ。有名店なの?」
「まだ2年くらいのお店なので。ここ、見てください」
「ん?」

東雲さんの細い指が示した部分を、目を凝らしてみてみる。

パティシエ・オーナー、神宮司(じんぐうじ)慎吾(しんご)……もうひとりは、東雲……遥?? え? ハルカ?
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