嘘と正義と、純愛と。
え……? なに?

『問題ある元カレ』というワードに引っかかってしまう。
さっきまでとは違う緊張感が私を襲う。

それって、もしかして広海くんのこと? だとしたら、『信用を得られて』っていうのは私からってこと……?

嫌な感覚が身体中を駆け巡る。
その先が気になる。でも、それを聞かない方がいい気がする。

頭の中では色々と考えているのに、身体が全く言うことをきかない。

「それで得た情報をみのりに回したんだから、もうあの子はいいだろ」
「まさか、本気なの? 彼女のこと」

斎藤さんの答えが聞こえ、さらに心拍数が増す。

待って。まだ、このくらいじゃなんの話かわからない。
だけど、それが本当に私の話だったなら、『本気なの?』っていう答えを聞いていいのかわからない。

やっぱり、この話はこの先聞いちゃダメなんじゃ……。

そう思っていた矢先に、女性の――みのりさんの声が耳に入って、私は愕然とする。

「でも、確かにね。イチヤにしては珍しく面倒なとこまで首突っ込んでる気はしてたけど。でも、それはてっきりあのしっかり者の姉より不安定な妹の方が取り入りやすいからだと思ってたわ」
「うるさい。そんなんじゃない」

待って……。これは、どういうこと?
『不安定な妹』って私? お姉ちゃんより取り入りやすいってどういう意味?
一体、この人たちは何者で、何が目的なの――?

その後は、もう自分でもどうしていいのかわからなくて、気づいたらふらりと柱から姿を晒していた。
私の姿を捕えた斎藤さんは、やっぱり狼狽する様子もなくて、それが余計に傷ついた。

少しくらい、慌てて取り繕って、弁解して、一生懸命私への嘘を考えて欲しかった。

だけど、そんな私の思いとは全く異なっていて、彼は真っ直ぐとした目を向ける。
反して、動揺していたのは車の中にいる人、みのりさんだ。
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