嘘と正義と、純愛と。
会えないなら、会えるまでやってやろうじゃない。
根性ならある方だと思うし、忍耐だってあると思う。

もう、迷うのをやめた。
俯かないで、前を見るんだ。

自分の居場所は自分で決める。たとえそれが、独りよがりな結果だったとしても、なにもしないで後悔するよりはマシ。

たくさんのことを教えてくれた。気づかせてくれた。
欲しいものは与えられるのを待つのでもなく、受け身になるのでもなくて、自分で手に入れに行くものなのだと。

本当に欲しいものを目の前にしたら、簡単に諦めなんかつかない。
私にそう思わせたのがあなたなんだから、私がなにをどう覚悟したって文句は言えないでしょう?

……イチヤさん。

そう心に誓った私は家に帰る。
きっと、いつもの自分なら、暗い気持ちで家に辿り着いていたに違いない。
でも、今は違った。

やるべきことを決めたから、暗い気持ちになってなんかいられない。

玄関を開けると、そこには珍しくお姉ちゃんがいた。

「あ、おかえり。それ、やっぱり茉莉の靴だったんだ。いつもと違う感じのデザインだからわからなかった」

玄関に入った私の足元を見るなり、お姉ちゃんはそんなことを言った。

「うん。最近貰ったの」
「へーえ。でもこの前までの好みと違うし、大方彼氏にでも合わせたんじゃないの?」

冗談半分で言っているってわかっていても、あまりに的を射ていて正直ドキッとした。
だけど、それは少し前までの私に当てはまってたっていう話。

「ううん。こっちが本当の私」

脱いだ靴を揃えながらぽそりと漏らす。すると、再び玄関が音を立てながら開いた。
顔を上げて驚いた私より先に、お姉ちゃんが反応する。

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