嘘と正義と、純愛と。
「うん。変わったの、私」

そんな答えを返すのもお姉ちゃんにとっては意外だったようで、目を白黒させていた。

固まっているお姉ちゃんを追い抜いて、先に階上に行く。
自室のドアノブに手を伸ばした時に、ガチャッと書斎の戸が開いた。

「あ、本当に早いんだね。やっぱり、同期の人の問題って内心複雑?」
「茉莉……そこまで知ってるのか」
「噂好きの社員さんなんてたくさんいるもの」

苦笑して返すと、脱力したように大きなため息を吐いたお父さんが一拍置いて開口する。

「前々からライバル視はすごい奴だったけどな。そこまでして俺より上に行こうとしてたなんて。バカな野郎だ」
「そこまでして……って、お金の問題だけじゃないの?」

不思議に思って聞き返すと、お父さんはハッとした顔を私に向けた。
いまさら隠せるものでもないと開き直ったのか、お父さんは目を伏せながら説明する。

「色々調べてたら、俺が背任行為をしたように見せかけることも仕組んでいたらしくて……。まぁ、本人はまだ否認してるけどな」

は、背任行為を仕組む……?! なにそれ!
それって、たとえば今回の着服とかそういうのをお父さんに擦り付けようとしてたってこと? あり得ない、馬鹿げてる!

憤慨して言葉も出ずにいると、お父さんは怒りを通り越して呆れてる様子だった。
そして、お父さんが不意にぽつりと漏らす。

「誰かがそれを阻止して、三木の悪事を暴いた」
「えっ?」
「そうじゃないのかなと、俺は思ってる。三木もあれで頭はいい奴だしな……。ああ、悪い。もう行く。このことは他言無用だぞ、茉莉」

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