嘘と正義と、純愛と。
立ち聞きしてたお姉ちゃんを横切って、軽快な足音で階段を下りていく。
そんなお父さんを振り向きもせずに、私はそのまま固まっていた。

「なに、今の話。やばくない? もし、それが実行されてたとしたら……ホント世の中怖いわ。横領に冤罪に暴力なんてザラね」

独り言のように言って、お姉ちゃんは部屋へと入っていった。

本当、世の中っていろんなことで溢れてる。

お姉ちゃんは何気なく口にしただけだろうけど、その中のひとつに私も苦しめられてただなんて知ったらどんな顔するんだろう。

ううん、今はそれよりも。
思考を少し巻き戻してお父さんの言葉を思い出す。

確実な話ではなかった。ただ、お父さんがそう思ってるってだけの仮の話っていうだけで。
でも、この妙な感じはなに?

ただの推測だけど、三木部長に依頼されてお父さんを調べてたっていう彼。その彼が、この件に関わってないだなんて考える方がおかしいよね?

あの人は、絶対何かを知っている。そして、何かしたんだ。

そんな想像を巡らせると、よりあの人に会いたくなる。
会って、全部聞きたい。

私への態度が嘘だったと、改めて証明されることになったとしても。
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