嘘と正義と、純愛と。
「女友達なんて昔からいなかったし、誘ってくる男は下心見え見えだし」

ああ、なるほど。
私とは違う理由だけど、東雲さんもひとりのことが多かったのかもしれない。

可愛いとやっぱり僻まれたりするんだなぁ。かといって、男の人と一緒にいたら悪循環だろうし……。ていうか、そもそも片思いの相手がいるならそんなふうに他の人と食事に行ったりもしないのかな。

いろんな事を考えて、じっとお人形のような顔を見つめていると店員がビールを目の前に置いていった。

涼しげに気泡がグラスの中をのぼっていくのを見ながら、どう声をかけようかと考えあぐねていた時。東雲さんが徐にビールを手にしてグラスを傾けた。

上品な雰囲気の彼女らしからぬ豪快な飲みだしに呆気に取られていると、コン!とグラスをテーブルに戻して言った。

「好きでもない男に気を持たせるようなことはしたことありません。だけど、女子は勝手な想像で私を創り上げて敬遠する。まぁ、別にそんな人と仲良くなんてなりたくないですけど。だから、ひとりで大抵のことは出来るようになったつもりです」

目が据わってるのは、酔っているからではなさそう。

そりゃそうだよね。まだ飲み始めたばかりで酔うわけないだろうし。つまり、なにかに怒ってるのかな……。その原因て、まさか私じゃないよね?!

ビールに手も伸ばさずに、そわそわとしている私を見た東雲さんは、深い溜め息を吐いて頬杖をつく。
どう切り返していいのかまだ悩んでいると、彼女が少し色の落ちた唇を小さく動かした。

「……だけど、ひとりが好きなわけじゃない」
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