嘘と正義と、純愛と。
いつでも一歩退くようなこんな性格だから、親しい友達も私にはいない。
ひとりで出かけることには随分前から慣れてるけど、友達同士で楽しそうに歩く人とすれ違うと無意識に目で追っている。

それに気づくと、私は羨ましいんだと気付かされる。

引きこもっているわけでもないし、きちんと仕事はしてるつもりだし。
彼氏もいるのに、人との交流が広がる気配なんて全然ない。

羨望感は確かにあるけれど、他のひとたちのように、人とうまく関わっていける自信もない。
行き交う人々をぼんやりと目に映しながらそんなことを思い、結局結論はいつもこうなる。

どのみち、広海くんを優先した生活だし、友達と会う時間もきっとないだろうし。
性別関係なく、頻繁に遊んでたりしたら、きっと広海くんが怒るだろうし……。

脳内で『広海くん』のことばかり考えちゃってたからか、遠くに広海くんに似た人を見つけてしまった。
よく着てる白いTシャツ。濃い色のジーンズ。
体系も遠目で見てすごく似ていて、思わずその男の人を凝視する。

さっき人ごみで顔は見えなかったけれど、ちょうど人の流れが途切れたときに目に飛び込んできたその人の顔。

「……広海、くん……?」

視力はいい方ではない。
だけど、コンタクトをしてるから、視界は至って良好だ。

楽しそうに笑う男の人は、どこからどうみても広海くんにしか見えない。

こんなところで偶然会うなんて滅多にない。というか、初めてだと思う。
だからきっと、こんなに心臓が跳ねて、ドクドクいってるんだ。

そう、初めての遭遇にびっくりして……。

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