嘘と正義と、純愛と。
彼女の後ろに続き、階段を下りて、夜道を歩く。
広海くんと揉み合いせずに、別れを告げ終わった安堵感もほんの少し感じただけで、今は目の前の田中さんのことが気になる。
この人は一体誰なの? 本当に職場で顔を合わせたことある?
次から次へと溢れ出る疑問の、何から口に出せばいいのかわからない。
それに、本当に会ったことある人だったとしたら、『どこでお会いしましたっけ?』なんて失礼な質問なかなか出来ない。
そわそわと落ち着きなく歩いていると、突然足を止めた田中さんに衝突しそうになって、慌てて私も立ち止まる。
さっきも思ったけど、田中さんって背も高くて本当に美人。
少し見上げるように彼女を見ると、綺麗だけどやっぱり表情は変わらなくて少し萎縮した。
「これ。返すわ」
「あっ。ご、ごめんなさい! ありがとうございます……」
スマホとバッグを差し出され、今まで持ってもらっていたことに今更気付いて恐縮する。
この荷物だって、仮に広海くんから逃げ出してきたとしてもそのまま忘れてきちゃってただろう。そうしたら、この荷物受け取りに行かなきゃダメになって、またきっとズルズルとなってたに違いない。
それらを含めて、やっぱり助けられた事実はかわらないから……。
そう思った私は深く頭を下げた。
「あの、ありがとうございます。だけど、どうして……」
広海くんのアパートがわかったの? なんで、私を助けてくれたの?
口にはしなかったが、きっと目がそう伝えてたんだと思う。
田中さんはジッと私を見据えた後に、腕を組んで顔を横に向けるとこう言った。
「頼まれたの。それだけよ」
「『頼まれた』? って、一体、誰に……」
自然と聞き返して、田中さんの顔を凝視する。
すると、彼女は顔に次いで身体を横に動かした。それと同時に、死角になっていた奥に人影を見つけ、目を向ける。
ガードレールに浅く腰掛けて、腕を組んでるのは男の人。遠目だけど、スーツ姿なのはわかる。
目を凝らしてもっとよく観察すると――。
広海くんと揉み合いせずに、別れを告げ終わった安堵感もほんの少し感じただけで、今は目の前の田中さんのことが気になる。
この人は一体誰なの? 本当に職場で顔を合わせたことある?
次から次へと溢れ出る疑問の、何から口に出せばいいのかわからない。
それに、本当に会ったことある人だったとしたら、『どこでお会いしましたっけ?』なんて失礼な質問なかなか出来ない。
そわそわと落ち着きなく歩いていると、突然足を止めた田中さんに衝突しそうになって、慌てて私も立ち止まる。
さっきも思ったけど、田中さんって背も高くて本当に美人。
少し見上げるように彼女を見ると、綺麗だけどやっぱり表情は変わらなくて少し萎縮した。
「これ。返すわ」
「あっ。ご、ごめんなさい! ありがとうございます……」
スマホとバッグを差し出され、今まで持ってもらっていたことに今更気付いて恐縮する。
この荷物だって、仮に広海くんから逃げ出してきたとしてもそのまま忘れてきちゃってただろう。そうしたら、この荷物受け取りに行かなきゃダメになって、またきっとズルズルとなってたに違いない。
それらを含めて、やっぱり助けられた事実はかわらないから……。
そう思った私は深く頭を下げた。
「あの、ありがとうございます。だけど、どうして……」
広海くんのアパートがわかったの? なんで、私を助けてくれたの?
口にはしなかったが、きっと目がそう伝えてたんだと思う。
田中さんはジッと私を見据えた後に、腕を組んで顔を横に向けるとこう言った。
「頼まれたの。それだけよ」
「『頼まれた』? って、一体、誰に……」
自然と聞き返して、田中さんの顔を凝視する。
すると、彼女は顔に次いで身体を横に動かした。それと同時に、死角になっていた奥に人影を見つけ、目を向ける。
ガードレールに浅く腰掛けて、腕を組んでるのは男の人。遠目だけど、スーツ姿なのはわかる。
目を凝らしてもっとよく観察すると――。