嘘と正義と、純愛と。
「じゃあ、やっぱり連絡きてるのか。どんな内容? 電話は出たの?」
「え、あ、その……電話は、一度も出てません。メッセージは……そのまま」
「見せて」

手のひらを差し出された私は、迷いながらもカバンからスマホを取り出し、ロックを解除するとその手に預ける。
斎藤さんはホーム画面のままのスマホを受け取ると、「勝手に見てもいいの?」と確認した。

私はそれに対して小さく縦に首を振ると、斎藤さんは“わかった”と言うような目をして画面に視線を落とした。

無言でメッセージを見られている間がだんだん耐えられなくて、落ち着きなくアイスコーヒーを口に運ぶ。

実は、広海くんに『別れたい』と告げたあの夜から、メッセージと電話が頻繁に着ていた。
電話は怖くて出られなかったけど、メッセージは中身がやっぱり気になって初めは開けて見た。

内容は短くて、だけどその言葉に威圧感を感じたから怖くてすぐ消した。
でも、消しても消してもすぐに同じようなメールか来る。
そのうち、ポップアップでだけ確認するようになっていた。

ブロックとか着信拒否とか考えた。だけど、最近頻繁に誰かに見られている気がしていてそれが広海くんかと思うと、すべての繋がりを一方的に拒絶すると逆上してしまわないかとか色々考えすぎて、身動きが取れずにいた。

斎藤さんはまだ真剣な目でスマホを見て、色々と手を動かしてるので、私は顔を逸らして店内を眺め、気を落ち着かせようと意識した。

【別れない】から始まって【自宅や職場に会いに行く】というのもあった。
一番印象強かったのが【俺以外の男を選んだらただじゃおかない】っていうもので、それを見た時に頭に浮かんだのが斎藤さんで……。

そこでまた視線を斎藤さんに戻すと、操作した手をピタリと止めてるところ。

「あ、あの。なにか変なものでも……?」

私、普段特にスマホを使わないし、だから変なサイトとかメールとかそういうのもないはずなんだけど、びっくりしたようなその雰囲気はなんだろう。

ビクビクとしながら斎藤さんの返答を待つと、彼が私にチラリと視線を向け、目が合った瞬間に吹き出した。
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