嘘と正義と、純愛と。
e.g6:絶体絶命
昨日の夜、広海くんを警戒しながら布団にもぐっていたけれど、家に尋ねてこられることはなかった。ただ、非通知設定の着信は何度か残っていた。

いつどんなアクションが起きるのかと警戒していると神経が昂ぶって、仮眠程度にしか寝られなかった。

カーテンを開けて時計を見ると、朝の八時。
仕事もない。予定もない。家ですることもない。
そんな私は、これから長い一日をどう過ごせばいいのかと気が重くなる。

贅沢な悩みなんだけど。休日なのに、気が重いだなんて。
静かな部屋でひとり考え込む。

だって、この間まで尋常じゃないメッセージと着信量だったから。
それがすべて拒否されたと広海くんも気づくだろう。そうしたら、逆上して予期せぬ行動を取って来るかもしれない。
心を改めてやめてくれた……とはなかなか考えにくい。

スマホを見つめ、きゅっと唇を引き結んだ。

本当に、出会った頃はすごく優しく笑う人だったのにな。

広海くんが変わってしまったことを思い返して切なくなると、それを振り切るように頭を横に振ってベッドから立ち上がる。

せっかく天気も良くて、休みなんだから。
暗い思考はこのくらいにして、何も考えなくても済むように何かに没頭しよう。
よし。珍しく朝ごはんを丁寧に作って食べて、その後は部屋の掃除を隅々しよう。無心で過ごすには大掃除、いいかも。

朝食を食べ終え、意気込んで掃除を始めると、予想以上に夢中になれてなにも考えずにいれた。
お昼はトーストにして、すぐにまた部屋に戻って続きをする。

クローゼットの中を終えて一息ついた時に、放置したままのスマホが音を上げた。
ついこの間までのことがあって、心底びっくりして肩を上げる。

落ち着いて。彼からの着信は拒否してあるから鳴るはずがない。
家族か、職場か……もしくはセールスの着信の可能性が高いはず。

私は気持ちを落ち着けると、スマホを見つけ、手に取って表示を確認した。
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