Someday ~私がいた夏~
 昨日 逃げ出してしまった私・・・。

恥ずかしいとは思ったけど、夏休みもあと3日。
夏休みが終われば・・・私はまたあの街へ帰らなくちゃいけない・・・。

このまま何もなしで戻るのは嫌だった。


凝りもせず、今日もあのスーパーへ。

葉月は、部活があるから私1人。

勇気がなくて、武田さんのいる所に入るまで30分。

小さなスーパーでうろうろする女子高生は、きっと目立つ。


しかも、ストーカーのように武田さんの姿を目で追いながら・・・。



 相変わらず心臓はドキドキしたまま・・・


私は、勇気を出してメンズコーナーに入る。

武田さんは、レジで何かを書き込んでいる。

目が合わなかったことでほんの少しホッとしている自分に苦笑いしながら、
買う気もない洋服をちらちら見ていた。



「今日は、逃げない?」

・・・えっ?・・・

 声のほうを振り返ると



 武田さんが近くに立っていた。



「あ、あ・・・はい・・・。」

まともに顔も見れないまま、フリーズする私。

「そんなに怖がらなくても、大丈夫なのに。」

そう言って、あのスマイルを見せてくれた。

 ドキドキしすぎて、息するのも忘れそう。

「何か探してる?」

「あ・・・いえ・・・別に・・・。」

「そうなんだ。」

 武田さんは、慣れた手つきでくしゃっとなった洋服をたたんでいく。

それをじっと見つめる私。

 視線に気付いたのか、

「ん?」

 首をかしげてこっちを向く。


(だから・・・その笑顔、やばいですよ・・・。キュン死しそうです・・・。)

 何か話そうとしても、頭の中が真っ白で言葉が出てこない。
棚の洋服をたたみ終えた武田さんは、レジに戻ろうとしていた。

その瞬間、口からこぼれた言葉・・・


「あ・・・あの・・・下の名前ってなんて言うんですか?」

「俺?ヤスノリだよ。」

「ありがとうございます。」

ペコッと頭を下げて、私はまた逃げ出した。


(ヤスノリさん・・・ヤスノリさん・・・)

心の中で、何度もつぶやきながら。
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