Someday ~私がいた夏~
 家の近くまで送ってもらって、私はカイの自転車を降りた。

カイの家は川を挟んだ向こう側にある。

 私は思いっきり手を振ってカイを見送った。


 家に帰り、テスト勉強をしようと机についた。お母さんはさっきまでの出来事を知る由もなく、紅茶とおやつを運んできた。

「ここに置くからね。」

「うん。ありがとう。」

「葉月ちゃんと会うのも大事だろうけど、試験前なんだからもうちょっと時間を考えて出かけなさいね。」

「うん。ごめんなさい。」


 母は、私がちゃんと勉強していれば安心するらしい。もちろん恋愛なんてもってのほか。こんな田舎町で、子どもが恋愛なんて…って本気で思ってる。

 恋愛とかしてる暇があれば、勉強して大学にすすみ、私の?親の?夢である教師になってほしいと。


 幼い頃はね…ホントに教師になりたいと思ってた。

素敵な先生に出会えたから。

 でも、今は……

 誰のためになりたいのか

 誰のためにならなくちゃいけないのか


 わからなくなってきてるんだ。


 
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