Someday ~私がいた夏~
 たった3日の連休はあっという間に終わり、私はまたあの大きな街へ戻った。
思い出すのは、康紀さんのこと。


 そんな中で受けたテストは、やっぱりそれなりの結果で。

自分がいかに『井の中の蛙』だったかと思い知らされた…。受験である一定の点数を取って合格した人ばかりが集まるんだもの、中学の頃のようにはいかない。

 だからと言って、自分を奮い立たせるものは何もなく…ただ漠然と毎日をやり過ごしていた。

 そんなある日、私はいつものように居心地の悪い寮へ戻り掲示板を見つめた。私が暮らす寮では、手紙が届くと手紙の欄に名前が書かれる。今日はそこに私の名前があった。私は自分の札を在寮のほうにして手紙が置いてある場所へ歩いた。ベージュにムーミンの絵が描いてある封筒。見慣れない字だなぁと思いながら、差出人を見た。

 武田康紀

 ん?

 ん!!!!


 康紀さんだ……。私のテンションは急上昇。小走りに自分の部屋に駆け込んで手紙を開けた。


「 あーどうも こんちわ。手紙とか書くの慣れてないから、書き出すのに時間かかったよ。この間って言ってもずいぶん前だね(笑)楽しい時間ありがと。試験どうだったかな? きっと桜ちゃんはがんばりやさんな感じがするから、いい点数取れたんじゃ?
 こっちは相変わらず、仕事が忙しい毎日で。とは言っても店内の有線聴きながらいろんな曲覚えてる(笑)たまに気づいたら歌ってたりしてね。怪しい人に思われてるかも!?
 なかなかこっちに帰ってくることないかもしれないけど、今度時間があったらカラオケでも行く?
 桜ちゃんはどんな曲聴くんだろうね。まだお互いのことよくわかってないから、いろんなこと知っていけるといいなと思ってるよ。
 あー、やっぱり手紙とか書きなれてないから難しいわ。女の子の寮に電話するのも勇気いりそうだし、とりあえず手紙書いてみたよ。それじゃあまた。」


 私は康紀さんの字をみつめながら、私に興味を持ってくれていることを嬉しく思った。
そして、また今度会おうと言う言葉を何度も何度も心の中で繰り返した。


 まだまだ子どもだった私は、この「恋の始まり」が一番幸せな時間だっていうことに、まだ気づいてなかった。
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