Someday ~私がいた夏~
「石原ぁ。」

振り返ると、彩ちゃんだった。

 たしか、今週一緒の掃除当番だったっけ…。

「彩ちゃん。1人で帰るの?」

「うん。掃除あったしね。バス停まで一緒に行かない?」

「うんうん。もちろん。」

 彩ちゃんが靴をはくのを待って、私たちは一緒に歩き始めた。


「……。」

「……。」

 彩ちゃんと帰るのもまともに話すのも初めてに近いんだから…会話なんてはずむわけがない。
 だけど、両思いと片思いの違いはあれど、社会人の人を好きってのは一緒。そんな些細な共通点にかこつけて彼氏のことを聞いてみた。


「彩ちゃんさ、彼氏働いてるの?」

「うん、そうだよ。てか、なんで彼氏の話よ?先生には内緒だからね。」

「もちろん、そんなのチクるほど嫌な人じゃないし。」

「まぁ、石原はそんなことしなさそうだよね。」

「うん。」

「で?好きな人が社会人とかぁ?」

 そう言って私の顔を見る彩ちゃんは、穏やかな笑顔だった。

「ん? ん~…まぁ。」

「なに?石原ぁ~ 顔赤いし。あはは。なんかかわいいじゃん♪」

「いや、その…ね。」

 私は夏休みからの出来事を簡単に話した。そして土曜日のことも…。

「遠距離で片思いねぇ…。ま、一番大事なのはきちんと気持ち伝えあうことじゃない?
年の差あるとさ、いろいろ言われるとは思うけど、自分たちがしっかりしてれば問題ないよ。いやぁ、恋愛けっこう♪勉強してるだけが高校生じゃないよ。」

「なんか、彩ちゃんに話してすっきりしたよ♪まださ学校の誰にも話してなかったから。」

「まぁ、石原はあんまり自分のこと話さなそうだしね。私が一番ってなんか嬉しいさ。」

 彩ちゃんはホントに嬉しそうに言ってくれた。私も、同じように明るい気持ちになった。
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